瞑想呼吸法とは?
「瞑想呼吸法」という名前を聞くと、何か特定の決まった呼吸法があるように思うかもしれません。しかし、実際には「瞑想呼吸法」というひとつの技術が存在するわけではありません。これは、瞑想を深めるために用いられるさまざまな呼吸法を総称してそう呼んでいるに過ぎません。
呼吸法には実に多くの種類があり、その方法によって得られる効果も異なります。リラックスに特化したものもあれば、集中力を高めるためのもの、エネルギーを高めるためのものもあります。さらに、瞑想を教えている講座やスクール、書籍や動画によっても紹介されている呼吸法はさまざまです。指導者ごとに伝えている内容が異なるため、「これが正解」といったものは存在しません。
どの呼吸法が最も優れているかという問いに対して、残念ながら明確な答えはありません。最終的には、自分の目的に合い、自分が続けやすいと感じる方法こそがベストです。ただし、呼吸法には目的との「相性」があり、向いているものとそうでないものがあります。その点だけは事前にしっかり押さえておく必要があります。
ここではまずリラックスを目的とした瞑想の方法として、1:2呼吸法で瞑想を行なった場合で話を進めていきます。
ビジネス瞑想と修行の瞑想
まず最初にお伝えしておきたいのは、「ビジネスとしての瞑想」が悪いというわけではありません。現代において、瞑想教室や講座、スクールが存在するのは当然の流れであり、それによって多くの人が瞑想に触れやすくなっているのも事実です。
ただ、そうした場では「継続してもらう」ことが収益に直結します。そのため、学ぶ内容が必要以上に多くなっていたり、長期間にわたって通うことが前提になっているケースも珍しくありません。実際、瞑想指導者の方々と話していても、「やり方だけ教えてあとは各自で」という形ではビジネスとして成立しにくいという声をよく耳にします。
それを理解した上で大切なのは、「その瞑想がビジネスとして提供されている」という事実を受け止めた上で、自分がその場からどんなベネフィット(恩恵)を受け取れるのかを冷静に見極めることです。
瞑想そのものは、特別な場所や講座がなくても一人で行うことができます。にもかかわらず、講座やスクールに通う意味があるとすれば、それは「瞑想以外の価値」がある場合です。たとえば、先生の人柄に惹かれる、学びの場の空気が好き、自分にとって居場所のように感じられる――こうした要素は、金額以上の価値となることもあります。
一方で、「通い続けないと瞑想ができない」と感じてしまうとすれば、少し注意が必要です。瞑想は本来、とても自由なものです。ルールや型に縛られる必要はありません。
現代における瞑想の多くは、かつての「悟りを開くための修行」ではなく、学びや気づき、あるいは体験型のコンテンツ――いわばエンターテインメント的要素を含んだ商品としての側面も持っています。
だからこそ、ビジネス瞑想が悪いのではなく、「何を受け取りたいのか」を明確にして学ぶことが大切なのです。単なるお客としてその場に参加するのか、先生との信頼関係を築きながら学びを深めていくのか。自分自身の立ち位置を意識して取り組むことで、瞑想体験はより豊かなものになるはずです。
自由な瞑想を目指す際の呼吸の考え方
まず、呼吸法の効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください:
瞑想におすすめの呼吸法も紹介しています。
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■呼吸法の種類とその効果
瞑想で使われる呼吸法にはさまざまな種類がありますが、実はそれに限らず、呼吸法というのは世界中に多くの流派・技法が存在します。そして、それぞれの呼吸法には異なる目的や効果が設定されています。
中には聞き慣れない名前や難しそうな言い回しの呼吸法もありますが、どれも結局やっていることは「吸って、吐く」の繰り返しです。違いがあるとすれば、呼吸のリズム(速さ)や、深さ、意識の向け方です。
驚くかもしれませんが、たったそれだけの違いで体や心に与える影響が大きく変わるのです。
■呼吸が自律神経に与える影響
その理由のひとつが、呼吸が自律神経(交感神経と副交感神経)に直接働きかける数少ない手段だからです。
▷交感神経が優位な状態とは?
交感神経は「活動・緊張・集中モード」です。日中の仕事やスポーツなど、体と脳がフル稼働しているときに働いています。
▷副交感神経が優位な状態とは?
こちらは「休息・回復・リラックスモード」です。食後や入浴後、就寝前など、心身を鎮める必要があるときに働きます。
瞑想では、この自律神経のスイッチを“活動”から“リラックス”へ切り替えるために呼吸を使うのがポイントです。
■呼吸で切り替える、心と体のモード
瞑想中に呼吸を整えることで、副交感神経が優位になりやすくなります。これにより次のような効果が得られます:
①自律神経のスイッチ機能
- 緊張がゆるみ、リラックスできる
- 深い眠りに入りやすくなる
- 痛みや不快感が軽減される
②血中酸素濃度の上昇→細胞への酸素供給
- 疲れにくくなる
- 細胞の回復が促進され、癒し効果が高まる
- 脳や筋肉のパフォーマンスが向上
■呼吸は“自由な瞑想”への入口
つまり、呼吸によって自分で心と体の状態をコントロールできるというのが、瞑想における呼吸の最も大きな魅力です。
- 眠る前に、緊張からリラックスへ
- ストレスを感じたときに、呼吸で整える
- 心を静めたいときに、深くゆったりとした呼吸をする
こうした習慣が、自由で、自分に合った瞑想のスタイルをつくる第一歩になります。
「自由な瞑想」とは、誰かに決められたルールに従うことではなく、自分の体や心に合わせて選び、感じること。
その起点として、「自分にとって心地よい呼吸」を見つけることが何より大切なのです。
なるほどな、瞑想において呼吸法とはリラックスできる手段なんだな。
そんな感じでイメージしてもらえたなら大丈夫です。
まずこれが瞑想の1つの形だと思ってください。
瞑想で呼吸法を実践していると眠くなるので困る
瞑想中に呼吸法を実践していると、次第に眠くなってしまう――そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
これは決して間違った反応ではなく、副交感神経が優位になりすぎて、リラックスを通り越して眠気に誘われる状態です。
特に、リラックスを目的とした瞑想では、「1:2呼吸法」(吸う時間の2倍をかけてゆっくり吐く呼吸法)がよく使われます。
この方法は副交感神経を優位にする効果が高く、緊張や不安の緩和、深い休息や入眠を目的とする場面では非常に効果的です。
1:2呼吸法の具体的なやり方についてはこちらのページをご覧ください。
■眠くなってしまう瞑想は“目的によって”問題になる
たとえば、夜寝る前に「深く眠りたい」「ぐっすり休みたい」という目的で行っているなら、眠くなるのはむしろ理想的な反応です。
しかし、昼間に少し気分転換したいときや、仕事や勉強の合間に頭をリセットしたいときに眠くなってしまうのは困りますよね。
そのような場合には、「リラックスしつつ、意識はクリアに保ちたい」という バランスの取れた状態 が理想です。
瞑想時の「姿勢」と「呼吸」の関係
眠気対策として大切なのが、「姿勢」と「呼吸法」の見直しです。
▼姿勢の影響
瞑想には様々な姿勢がありますが、「寝転がって行う瞑想(シャバーサナなど)」は、完全にリラックスするためには非常に有効です。
ただしその分、眠気を誘発しやすく、気づいたら眠ってしまっていることも多いのが難点です。
その対策としておすすめなのが、「背筋を伸ばして座る姿勢(坐法)」。姿勢が整うことで、
- 呼吸が深くなりやすい
- 意識が散漫になりにくい
- 身体の軸が安定し、眠気を防ぎやすい
といったメリットがあります。
姿勢 × 呼吸法で瞑想の質をコントロール
つまり、「1:2呼吸法」で副交感神経を働かせつつも、「眠くならないように姿勢を整える」ことで、
リラックスしながらも意識を保った瞑想が実現できます。
ただし、それでもやはり「呼吸の効果」が強すぎて、正しい姿勢を取っていても眠くなってしまうという方もいます。
これは呼吸の影響がしっかりと出ている証拠でもありますが、目的によっては呼吸法の選び方を変える必要が出てきます。
では、眠くならない呼吸法はあるのか?
はい、あります。
ここでようやく次の選択肢、「眠くなりにくい呼吸法」や「活動モードを引き出す呼吸法」の出番です。
このあとご紹介するのは、副交感神経に偏りすぎず、意識を保ちながら集中や覚醒を促す呼吸法です。
場面や目的に応じて呼吸法を切り替えることが、本当に自由な瞑想を可能にしてくれます。
眠くならない呼吸法とは?
わかりやすく言ってしまえば、息を吸う(活動方向へ)、息を吐く(リラックス方向へ)という考え方がわかりやすいと思います。
1:2呼吸法は、息を吸う事よりも息を吐く事に倍時間をかけますので、副交感神経が優位になりやすい呼吸法になります。
じゃあ、息を吐く方に重点をかけない呼吸法であれば、副交感神経が優位になりすぎず、眠くなる事を防ぎやすくなります。
色々な呼吸法がありますが、この点を意識するだけでも呼吸法の特徴がなんとなくわかると思います。
ここで瞑想に対する2つの目的が存在する事に気づいた方もいると思いますが、
・リラックスを追求した瞑想
・リラックスを追求するのではなく、気分転換やリセットとしての瞑想
瞑想に求める効果に違いが出てきます。
こうした「雑念がない」「無心」などの状態を通して自分と向き合うという考え方は、僧侶や禅僧が悟りを目指すために行っている瞑想の方向性に近いものです。
とはいえ、私たちは僧侶になりたいわけではありませんし、悟りを開く為の修行がしたいわけでもありません。
自分と向き合うという部分の良いとこだけ取り入れられないかな?と言ったのが、現代でのマインドフルネスとしての瞑想のあり方ともいえます。
すでに述べたように、眠くならない呼吸法の鍵は「副交感神経に偏りすぎないこと」です。
ここでは具体的に、集中力を高めながら瞑想を続けるための呼吸法の選び方を紹介します。
■眠くならない呼吸法とは?
とてもシンプルに言えば、
- 「息を吸う」=活動・覚醒方向へ作用する
- 「息を吐く」=リラックス・鎮静方向へ作用する
という基本原則があります。
たとえば、1:2呼吸法は「吸う:吐く=1:2」の比率で呼吸を行うため、吐くことに重点を置くことで副交感神経が強く働き、リラックスが深まります。
しかし、その分眠くなりやすいというのが欠点でもあります。
逆に、眠くなりたくない場面では「吐く時間をあまり長くしない呼吸法」を選ぶことで、副交感神経が優位になりすぎるのを防ぐことができます。
■呼吸法の選び方で、瞑想の目的が変わる
ここで気づかれる方もいるかもしれません。
実は、瞑想には次の2つの方向性があるのです:
1. リラックスを目的とした瞑想
- 副交感神経を優位にし、心身を深く休める
- 就寝前や疲労時に最適
- 1:2呼吸法、寝転がる姿勢などが合う
2. リセット・リフレッシュを目的とした瞑想
- 思考をリセットして、集中力を回復させたいとき
- 日中の気分転換や短時間の休憩に最適
- 吐きすぎない呼吸法、背筋を伸ばした姿勢が合う
■瞑想が「わかりにくい」と感じる理由
この「目的の違い」が、瞑想を難しくしている大きな原因のひとつです。
どちらも“瞑想”ではありますが、使う呼吸法や姿勢、意識の持ち方が変わってくるため、「結局どれが正しいの?」と迷いやすいのです。
■僧侶の瞑想と、私たちの瞑想
そもそも、瞑想の本来の目的は「悟り」や「自己の超越」を目指すものでした。
僧侶や禅僧が行う瞑想は、「無心」や「雑念を取り払う」ことを通じて、深い精神性に到達するための修行の一環です。
でも、私たちは僧侶になりたいわけではありません。
毎日数時間も座り続けて、無我の境地を目指す必要もありません。
■マインドフルネス瞑想という現代的アプローチ
そこで現代に広まっているのが、「マインドフルネス」という考え方です。
これは、仏教的瞑想から宗教色を取り除き、生活に役立つ形に翻訳した実践法とも言えます。
つまり、
- 無心であろうとせず、
- ありのままの今の自分と向き合い、
- 呼吸を手がかりに心の状態を観察する
というスタイルです。
「リラックスだけでもない」「悟りでもない」
自分のための瞑想、自分のための呼吸を選べる時代になったのです。
マインドフルネスにおける呼吸は、意識を向ける対象のひとつです。必ずしも特定の呼吸法にこだわる必要はなく、自然な鼻呼吸や、動きながらの瞑想、食べながらの瞑想など、呼吸そのものを意識しない方法もあります。
マインドフルネスにおいて呼吸は、意識を傾ける1つの対象であって、呼吸法に対する考え方は比較的自由です。
指導している場所で異なると思います。
自然な呼吸や、鼻呼吸で行う事も珍しくはありません。
動きながらの瞑想や、食べながらの瞑想など、呼吸を全く意識しない方法での瞑想方もあります。
大切な事は意識の向け方、向ける方向であり、意識の妨げになるものでなければどのような呼吸法でも問題はありません。
オススメの方法は、座禅の呼吸法
詳しくはこちらのページを参考にしてください。やり方など解説しています。
禅の呼吸法は極めてシンプルで、鼻呼吸が基本で、普段の呼吸に近く自然に行えると思います。
瞑想とマインドフルネス瞑想の違い
マインドフルネスで大切な事は意識の向け方であり、意識の向け方を変えることで、「気付く」事です。
この意識の考え方については、こちらのページでカメラのシャッターの例で説明しているのでこちらを読んでください。
ここまでの話を読んで、瞑想というものは、呼吸、姿勢、意識、3つの重要な要素があり、そのバランスで目的や効果があるのがなんとなく伝わったかと思います。
この3つのバランスを理解していると、異なる瞑想を実践した場合も、その方法がどのような効果を意識したノウハウなのかがわかると思います。
瞑想の呼吸法というと、呼吸の方法に目が行きがちですが、まずは瞑想の目的があり、その目的に合わせた呼吸、姿勢、意識の要素が加わり、1つの瞑想法が構成されるというイメージです。
呼吸法だけではなく目的に合わせたバランスが大切という事をぜひ覚えてください。
マインドフルネス瞑想において最も重要なのは、「意識の向け方」です。
つまり、今この瞬間に意識を向け、そこにある気づきを得ることが最大の目的になります。
この「意識の向け方」については、カメラのシャッターの例えを使って、以下のページでより詳しく解説しています:
【意識の焦点とマインドフルネスの関係はこちら(※リンク挿入)】
■瞑想を構成する3つの要素
ここまでの内容を振り返ると、瞑想を理解するうえで重要なのは、以下の3つの要素です:
- 呼吸
- 姿勢
- 意識
この3つのバランスによって、瞑想の目的や効果が変わります。
たとえば、
- 「リラックス」を目的にするなら、深くゆったりした呼吸と、脱力した姿勢、安心感を感じられる意識の方向づけが重要になります。
- 「集中」や「気づき」を求めるなら、背筋を伸ばした姿勢と、呼吸のリズムを保ちながら、意識を“今”に留める工夫が求められます。
■瞑想の「やり方」よりも「構造」を理解する
「この瞑想法はこうやる」といった形だけを真似するのではなく、
なぜその呼吸を使っているのか?
なぜその姿勢なのか?
意識をどこに向けようとしているのか?
こうした背景がわかると、さまざまな瞑想法に出会ったときに、その構造や意図が見えるようになります。
従来の瞑想は、「無心になる」「悟りを目指す」など、ある種の到達目標が設定されていることが多くあります。一方で、マインドフルネス瞑想は、“今この瞬間をただ観察する”ことそのものが目的です。
言い換えれば、
- 一般的な瞑想:意識を“静める”ことが主目的(内省・悟りなど)
- マインドフルネス瞑想:意識を“向ける”ことが主目的(気づき・観察)
という違いがあります。
■呼吸・姿勢・意識は「手段」である
最後にもう一度強調したいのは、「呼吸法に正解がある」のではなく、
“目的に応じた呼吸・姿勢・意識のバランス”こそが大切ということです。
- 呼吸は気分の状態をつくり、
- 姿勢は集中力や覚醒度に影響し、
- 意識の向け方が気づきの質を左右します。
瞑想はこの3つの要素を使って、自分の内側にアプローチする「設計された体験」なのです。
自由に、目的に合わせて瞑想を選ぶために
これから瞑想を深めていく中で、ぜひ“形”にとらわれず、
自分の「今」に合った方法を、自分で選べるようになってください。
それが、本当の意味での「自由な瞑想」であり、
現代におけるマインドフルネスの実践なのです。